近鉄は50000系「しまかぜ」をはじめ、 2013系「つどい」、15400系「かぎろひ」など… 観光客を意識した特別仕様の車両を多数投入してきました。 南大阪線系統にも26000系「さくらライナー」が 運転されてはいるのですが、 より観光輸送に特化した車両をとして 導入されたのが16200系です。 2016年9月にとして運行を始めました。 そんなに数はいらないということで 一般車改造の観光用車両となりました。 一般車改造というなら2013系「つどい」もそうです。 ですが、これは特急ではありません。 一般車が特別料金をとる特急車に改造された例は 近鉄では680系がそうです。 これらは形式も車番もそのまま引き継いでいます。 しかし今回は16200系と新形式での登場です。 5桁ですね、 近鉄では10000系ビスタカー以来、 新製される特急車両には5桁の形式を割り当てています。 2013系「つどい」と違い、 16200系には「特急」として再生するのだ という強いメッセージが感じられます。 そしてその名も「青の交響曲」(あおのシンフォニー)。 関西では特別料金をとってもおかしくないアメニティ を誇る特急車が、当たり前のように走っています。 価格に見合った価値を提供しなければ 関西人は見向きもしません。 16200系とはどのような車両なのかということを考える前に 「特急列車」に求められる価値 とは何か考えてみたいと思います。 まずはスピードでしょうね。 在来線に対し新幹線は圧倒的なスピードで いち早く目的地に到達することができます。 3時間以内であれば航空機よりも アドバンテージがあるといわれています。 「時は金なり」ですよね。 近鉄特急にしても、名阪特急は新幹線には及ばないものの、 ミナミ(=大阪難波周辺)を起点とすれば 価格に見合った料金設定で十分対抗できます。 次は移動空間としてのアメニティに優れている。 ということです。 必ず座れるということで全席指定席の設定をしている 近鉄特急はこういうところが徹底しています。 「おしぼりサービス」や「車販」が充実していたものそうです。 ここで南大阪線を走る「吉野特急」について考えてみます。 関西では特別料金をとらない特急車が 当たり前のように走っています。と前述しましたが、 これらはそれぞれに ライバルというべき他社線と対抗するために 進化してきたものです。 対して「吉野特急」にはライバルが存在しません。 一人勝ちといいたいところですが、 そもそもそんなに需要がないからライバルがいない。 というのが実際の所です。 スピードアップしても 他社から客を奪うなんてことはありません。 ですから「吉野特急」は 「移動空間としてのアメニティに優れている。」 ということが、 需要を喚起するために欠かせない要素となります。 26000系「さくらライナー」はまさにその具体例です。 近鉄はちゃんと手を打っているのですね。 とはいえこのままでは手詰まりです。 次の一手を打たなければなりません。 価格に見合った価値を新たに創り出すために 近鉄が考えたこと。 それは「吉野特急」で旅することが、 他では味わえない魅力にあふれている ということをアピールする 提案型の車両を創ることでした。 吉野といえば、桜が有名ですが、 他に何があるのかと言えば、どうでしょう? 同じく奈良県には、 東大寺、法隆寺、薬師寺…といった メジャーな観光地がありますが、 吉野線沿線ではいかがです? 実は「吉野特急」の沿線にも 魅力的な観光資源があります。 日本遺産として認定されている古き都「明日香村」、 世界遺産「紀伊山地の霊場と参拝道」として登録された 「金峯山寺」をはじめとした神社仏閣など その歴史を知るものには、 尽きることのない魅力を 提供してくれるスポットがあります。 文化だけではありません。 行者たちが修行の場とした紀伊山地の山々は 自然の宝庫です。 このようにみてゆくと、 子ども連れのファミリー層より 知的好奇心にあふれる大人たちこそが ターゲットとなるでしょう。 「青の交響曲」の開発コンセプトが 「ゆったりとした時間を楽しむ、上質な大人旅」、 「大人同士でゆったり楽しむ観光列車」 である点はおおいに納得いくところです。 では大人たちの眼鏡にかなう「特急 青の交響曲」とは どのような車両なのでしょう。 客室を配置した先頭車(1・3号車)が、 ラウンジスペースとバーカウンターを設置した 中間車(2号車)を挟み込む構成です。 ご覧の通り、 センターに配置された2号車(ラウンジカー)こそが 「特急 青の交響曲」の核となるものです。 側窓が小窓化され少し薄暗い室内は 落ち着いた高級ホテルのラウンジを思わせます。 20席分の革張りソファは車窓を愉しむのではなく、 大人同士がリラックスして語らうためのアイテムです。 バーカウンターが提供する美酒に酔いしれ、 美味しいおつまみに舌鼓をうてば お話が弾むこと請け合いです。 デッキ部分には、話のネタ本が陳列されたライブラリーが これもまた、 新たな出会いを演出するアイテムとなるでしょう。 私も昨年、「特急 青の交響曲」にサイキョージ氏と乗車しました。 サイキョージ氏はすぐさま、ラウンジカーへゆこうとしますが、 大和上市まではと押し留めます。 吉野線屈指の景観が楽しめる吉野川橋梁があるからです。 そんなわけで、 ラウンジカーのバーカウンターはもはや行列です。 出遅れちゃいました。 河内ワインと柿の葉寿司を購入し、 ラウンジでいただくことにしたのですが、 ほぼ満席です。ぎりぎりセーフでした。 席が空くのを待っている人が沢山いるようなので、 早々と客席に戻ります。 それでもラウンジカーで飲食を楽しみ、 ほろ酔い気分で座席に戻った後は、 その豪華な客室にすっかり満足してしまいました。 だから…というわけではないのですが、 また乗りたいという気分には 不思議と…そうはならかったのです。 おもえばの1号車の座席定員は37名。3号車は28名。 あわせて65名にすぎません。 DXシート車料金を取っているとはいえ、 列車自体の収益はしれています。 リピーターを増やさなければならないでしょう。 しかし自分がリピーターになるか?と考えたとき、 やはり背中を押してくれる何かが必要だ という気がしたのです。 うーむ 提案型の列車のあるべき姿とは…。 そんなことを考えながら、 豪華な座席に身を沈めてまどろんでいると (ここから先は、私の妄想です。おつきあいください。) −−−−ほどなく、車内放送が… 「青い交響曲のコンシェルジュからご案内いたします。 ただいまより、当列車のサポーターでもある ○○交響楽団のフルート奏者 △□様による ミニコンサートがラウンジにて行われます。 あいにくラウンジカーの座席は満席となっておりますが、 客席のお客様にはお手持ちの スマホ、タブレットでご視聴いただけます。 座席にございますQRコードからアクセスできます…。」 「なるほど、だから空席待ちしていたのか。 しまったなあ。」 といいつつも、スマホでコンサートを楽しみます。 コンサートが終わり、再びコンシェルジュ、 「お楽しみいただけましたでしょうか。 なお○○交響楽団の公演スケジュールとチケット割引券を コンシェルジュデスクにご用意いたしております。 ご希望のお客様はお声がけください。 あわせて告知させていただきます。 これまた当列車のサポーターである□△○歌劇団では、 明日香村を舞台とした 歴史ロマン−ひの○り−を公演予定です。 公演に先立ちまして劇団員の□○様による トークショーが当列車ラウンジカーで行われます。 こちらは予約制です。 詳しくは当列車HPをご覧下さい。」 サイキョージ氏はスマホの画面に指を指し、 「「○△亭 出張小咄−桂 ○□−」 こんなメニューもあるんや。」と教えてくれます。 うーむ、列車が情報の発信源となるのですね。 そういえばバーカウンターでお会計をしたとき 「青い交響楽」なるパンフレットを をもらったのですが、 ここには観光スポットの とっておき情報やクーポン券が満載。 拝観券の割引だけでなく、おみやげも格安で買える…。 この冊子だけで特急料金分くらい 楽勝で浮いちゃうじゃあないですか。 お、ハルカス展望台の割引券まである!。 −−−−目を覚ますと、 車窓に巨大なあべのハルカスが…、 そうだ、我が街 大阪にも いかなきゃならないところがいっぱいあるじゃないか。 旅の終わりは、旅の始まりでもあったんだ。 |
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