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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>近鉄モワ24系 はかるくん
ー 何をはかっているのかな? −近鉄モワ24系 はかるくん−近鉄モワ24系は「はかるくん」と命名された電気検測車です。文字通り、電車線やATSなどが正常に動作するかなどの検査を行う車両です。 電車は、架線から電気を取り込み、モーターを動かしたり、照明を点けたりするわけですが、 接点である架線・パンタグラフはともに擦れ合うことで日々摩滅していきます。 また架線は、気温の変化などで伸び縮みもします。 「架線検測車」は実際に線路を走行して、架線の摩耗状態やレール面上からの高さ、レール中心からの振れを検測し、データを蓄積してゆく車両です。 そしてこのデータを元に、計画的に架線の交換・調整といった作業を効率的且つ的確に行い、鉄道の安全・正確な運行を支えてゆくというわけです。 クモヤ93000以後、国鉄そしてJRまたは大手私鉄でもドーム付きの検測車は製作されています。 使用目的が特殊なら当然、個体数も少なく、そうそう普段はお目にかかれない車両なので、 どれもSSレアクラスの珍車ばかりです。 当局の珍車ギャラリーでも、いくつか採り上げています。 東京急行電鉄 デヤ3001 架線検測車 富山地方鉄道 モハ7541 架線検測車 見ていただければ、わかることですが、どちらも前世紀の遺物とも言うべき車体をもつ旧型車です。 記事の内容もその歴史的車体に言及したものになっています。 そして、今回の「はかるくん」です。2007年にデビューしました。 画像の横、右上のスペックをご覧ください。 特になんてことはないですね。むしろ古くさいくらいです。 それもそのはず、「はかるくん」(モワ24系)もまた、1968年に製造された在来車である2410系W11編成を改造しデビューさせたものなのです。 でも改造車とはいっても、車体に大幅に手を加えており、 2410系の面影はほとんどありません。 前照灯は中央に寄せられ、貫通扉は撤去、3面連続窓が嵌め込まれました。 側扉は乗務員扉と1か所を残しすべて埋められ、側窓も片側3か所のみとなっています。 検査項目をイメージしたアイコンが散らされたその姿は自らがハイテクで武装されていることを誇らしげに語っているように見えます。 そう、改造車とはいえ、はかるくんのパフォーマンスは上記の架線検測車の域を大きく超えているのです。 ちなみに導入費用は4億円を超えるそうです。 鉄道車両の価格は通常の通勤電車であれば、ざっくり1両1億円というのが目安です。 いかな、手の込んだ改造とはいえ、4億円というのは破格ですね。 要は検測機器のお値段が半端ではないということです。 ただ…なぜ21世紀の今になって近鉄がこれを登場させたのか。 ずーっとそれが気になっていました。 それというのもJR九州の新幹線800系です。 「つばめ」に使用される営業運転用の新幹線ですが、検測用の機能を編成ごとに分担させて持たせています。 U007,U009編成には軌道の検測をU008編成には電力、信号、通信の検測をする装置が搭載可能となっています。 そしてU001編成には線路および架線の検測機能を持たせているのです。 パンタグラフのところには、明電舎製の架線検測装置CATENARY EYEが取り付けられました。 従来の検測項目に加え、パンタグラフの接触力測定まで行います。 カメラの画像解析技術により実現した世界で初めてのシステムです。 そして、JR東日本の多目的試験車209系試験電車 MUE-Train です。 専用の車両や地上設備の測定機器で行なっていたことを一般の営業用車両でやろうという試みです。 レール、架線などの状態を計測する小型の機器を車両に搭載しこれらのデータをを゙オフィスに持ち帰り、そこで解析するわけです。 目視によるチェックではないので当然、観測ドームはありません。 外見上の特色にも乏しく珍車マニアとしてもあまり食指が動くものではないのですが、 とりわけ高価な検測車を新たに新造する必要もないわけですし、他社も追随するのかなと思っていたのです。 しかしそうはなっていないようです。 なぜでしょう? JR九州800系は他の検査専用車両のように検査機器を常時設置しているわけではありません。 検査実施時のみ機器を搭載して検測を行います。 どの程度の機材を車内に積み込むのか。詳しいことはわかりませんでしたが、 検測機器の調整はこれを完璧にしないと意味がないので、これはこれで結構大変じゃないかなと思われます。 加えて、やはり大事なのは現場で実際にその空気に触れ肌で感じることではないでしょうか。 「はかるくん」では事前に入力された電柱位置データを元に実際に現場で測定したデータを付き合わせより高精度なデータを得ます。 また車内には架線検側測定台があり、そこには4台のモニターが搭載されています。 屋上にあるパンタ監視カメラが撮影した画像を、その場であらゆる角度からリアルタイムで観測することができるのです。 また、それらの画像は録画されていますから、検測途中であっても気にかかる場所があれば再生しその場で確認することも可能です。 現場での印象を大事にする近鉄のスタッフの姿勢がうかがえます。 もちろんここで得たデータは、別途構築した地上処理システムにもフィードバックされます。 「はかるくん」は私鉄で最長となる近鉄の路線約500キロを年4周のペースで巡回し、検測運行をしています。 さて、近鉄の路線の多くは標準軌ですが、狭軌の南大阪線もあります。 また経営は3セクの養老鉄道に委ねられましたが、事実上近鉄車両が運行する養老線もあります。 なんとそれらも「はかるくん」の守備範囲となっているのです。 クワ25には電気連結器も併設されており、 台車を狭軌用のKD-61CK形に交換した上で南大阪線・養老線車両と併結し、 同線の走行、検測も可能となっています。 (ちなみにモワ24は牽引車という位置づけで、車内はがらんどうです。南大阪線では6200系が、養老線では610系がクワ25を牽引。) そういえばユーチューブで、阪神桜川駅にまで入線してくる「はかるくん」の画像を見ました。 ひょっとしたら、阪神電気鉄道が「はかるくん」を近鉄からレンタルして三宮まで使用する…なんてことになるかもしれませんね? 高価な機材であってもフル稼働できるのであれば、これはビジネスになります。 「はかるくん」が阪急のみならず能勢電や山陽電鉄でも活躍する時代が来るかもしれません。 ところで、こうした架線検測車がない鉄道会社はどうしているのでしょう。 近鉄でもかつてそうでしたが、検測車は営業運転終了後の深夜帯に走らせていました。 線路閉鎖後ということなので機械扱いとなり車籍がなかったというわけです。 また線路閉鎖後なので、最高時速30キロで検測しても問題はなかったわけです。 しかし、これは検査員に深夜業務を強いることになります。 一方、通勤型電車を改造した「はかるくん」なら日中にダイヤの合間を縫い最高時速110キロで走行しながら検測をこなせます。 すなわち3倍強、効率的に測定できかつ人件費を大幅に節約できるのです。 検測車は高価な車両ですが、 近鉄は検測しなければならない路線の長さとそれにかかる諸費用とをはかりにかけ「はかるくん」を製作したのだと思われます。 参考文献:鉄道ピクトリアル 「鉄道車両年鑑2007年版」 2007年.10月 No795 の記事 |
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