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−近畿日本鉄道 モト90形97.98−多彩な運転線区を抱える近鉄ならではの珍車たち
1982年という年は、五位堂検修車庫が新設された年ですが、近鉄において、これは特別な年といえます。 それまで大阪線は高安で、奈良線は玉川で、南大阪線は古市の3工場で車両の整備・検査等の検修を実施していました。 しかし、この年から新設されたばかりの五位堂検修車庫で一括して検修を実施する体制へ移行することとなったのです。 もっとも、高安も古市も検車区として残っています。奈良線にしても玉川工場はなくなりましたが、東花園検車区が健在です。 日々の状態や機能検査はここで行います。 しかし、鉄道車両は定期的に大がかりな手入れをしてやらなければなりません。 近鉄では、新造ののち4年後に重要部検査、そのまた4年後に全般検査というサイクルを繰り返して、 40年後廃車するというライフサイクルを企図しています。 これら重要部検査、全般検査を行う部門を検修部門と呼び、その現場を検修車庫と呼ぶわけですが、 それを五位堂でまとめてやってしまうということです。 (ちなみに、青山峠を越えられない名古屋線車両と三重県の独立路線は塩浜検修車庫で集約します。) これらの検修作業は、車体をつり上げ、台車と分離、 ほかブレーキ、モーター、制御器等も分割してそれぞれのエキスパートが徹底した検査加修を行います。 これらの作業を集約することで設備投資を抑え、適正な人員配置をすることで作業の効率化を図ろうというわけです。 とはいえ、大阪線、奈良線は標準軌、対して、南大阪線は狭軌です。そのまま移動することはかないません。 ですから古市検車区から五位堂検修車庫まで南大阪線用車両を回送するにあたって、 狭軌と標準軌の接続点である橿原神宮前から五位堂検修車庫まで、それらの車両の装着する狭軌用台車を外し、 標準軌用の仮台車を装着することにしました。 当然仮台車にはモーターはありませんから、電動貨車を1両ずつ回送車両編成の前後に連結して運転することにしたのです。 そこでモト90形97・98が南大阪線用車両の回送用電動貨車に指名されました。 モト90形97・98は、1960年大阪線の保線用車両として新製されました。 なお1970年3月に改番されるまでは、モト2721・2722と呼ばれておりました。 全金属製のスマートな車体ですが、 初代1420形(元モニ2230形)が付随車化される際に余剰となった足回りを再生した吊りかけ駆動の旧性能電車でした。 新製当時から2両1組で使用され、レール運搬などに従事してきましたが、 1982年、そんな彼らに新たな使命が与えられたというわけです。 荷台にはレールが敷設されました。台車を積載する時に使用します。 あわせて台車をD-22から2250系の廃車発生品であるKD-15Bへれ交換しました。 それだけではありません。 ブレーキも南大阪線用車両と互換性のあるHSC電磁直通ブレーキに換装しました。 本来ならば、走行できない車両を電動貨車で牽引して工場に持ち込むという方法は、いいアイデアだったようです。 近鉄は、その後、1992年に高性能化された養老線(狭軌)用車両を塩浜検修車庫まで回送するためモト90形94.96を改造。、 そして、第3軌条の東大阪線用7000系を五位堂検修車庫に回送するため、 今度は、モト75形77.78(開業当初はモワ11.12)が改造されることになります。 振り返れば、複雑なその歴史的経緯を経て、多彩な運転線区を抱える近鉄ならではの珍車たちと申せましょう。 モト90形97.98はその後、1995年に、名古屋線用の1800系を養老線へ610系として転用する際に発生した足回り、 すなわちKD-60B台車とMB-3110B電動機、加えて奈良線用800系からの廃車発生品であるMMC-LTB20C制御器を流用、 WN駆動の高性能車となりました。 まだまだ使ってやろうという近鉄の思いが伝わってきます。 思えば、それから18年。1960年の新製時からはもう53年以上の歳月が過ぎたわけです。 五位堂から古市まで、大型トレーラーが通行できるような道路ができたなら、話は別ですが、 まだまだ現役で頑張ってくれるのではないでしょうか。 参考文献;鉄道ピクトリアル No727 特集 近畿日本鉄道 2003年1月 私鉄の車両13 近畿日本鉄道U 1986年2月 先日、五位堂で回送列車が仕立て上げられているのを見て、これはと思い。 畝傍御陵前で粘って走行写真をゲットしました。 橿原神宮前では、結構長く留置しているので、ここで目撃された方も多いのではないでしょうか。 踏切から、または側道からもきれいに撮影できます。
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